ピンクとグレー 映画レビュー
昨日ピンクとグレーを観てきた。原作未読。ざっくりまとめると以下のようなことが描かれています。(とりあえずネタバレはありません)
・シスコン売れっ子俳優の光と闇
・人と人はわかりあえない
・芸能界の闇は深い
・スペック高い親友に対する羨望と嫉妬
・その親友の力を借りずには自分の力だけでは売れない俳優の懊悩
・男二人女ひとりのなかよし三人組の恋と友情
結論から言うと役者さんのファンでなければ映画館で観る価値なし。
あと無駄に暴力や性の描写があるので苦手な人はやめておいたほうが良いです。
(なんでこれR指定ないのか不思議)
ここからはネタバレありです。
62分まではまだよかったんです。都会に出て芸能界入りの夢を追うごっちとりばちゃん、そのひたむきさには感情移入できたし、りばちゃんの葛藤も胸に迫ってくるものがあった。でも、62分後からは無駄に過激なシーンが多い上にそこから浮かび上がるメッセージが薄っぺらすぎる気がしました。
ここからは気になったところ、気に入らないことをピックアップしていきます。最後によかったと思うところもちょろっと書いてます。
・男2人と女1人の友情にリアリティがない。
まあ映画という作品なんだから、と言われればそれまでだが、3人が仲良くなったきっかけが「しょーもな」と言いながらボールを壁に投げるシーンというのが説得力がない。もうすこし一緒にいることが納得できるようなエピソードを提示するべき。
・ごっちの姉がなぜ死んだのかさっぱりわからない。
後半でごっちが死ぬステージ直前の姉を撮ったビデオが出てくるが、そこで「ステージから飛ぶの」という姉のせりふがあることから、自殺であることがわかる。それを聞いた高校生のごっちは自殺予告だとは気づいていなかっただろう。また、ビデオ後半では姉と弟にしては甘すぎるシーンが出てくるし、りばちゃんがごっちの亡霊(?)に姉貴のこと好きだったのかよ、と問いただすシーンもあることから、ごっちが姉にただならぬ感情をいだいていたことがわかる。禁断の恋をした弟が、美しきダンサーの姿のまま自らの命を絶った姉の後を追った、というお話らしい。いや待て待て、昼ドラか!! こうもドラマチックだと陳腐すぎて冷めてしまうわ。
・りばちゃんがさりーに襲い掛かる×2、さりーの恋ってなんだったの?
一回目は、お色気ビデオを見てから好きな人と密室でふたりっきり、ふいに見えた太ももに衝動を抑えられないアホ男子高校生、だと考えてまあよしとしよう。
しかし2回目はどうだ。芸能界で先を追い越され態度も変わった親友に打ちのめされ、そのはけ口としてさりーを使おうとしている。初めは抵抗するものの受け入れるさりー。嗚咽を漏らすりばちゃんの頭を優しくなでているその行動にあるのは、愛ではなく情である。哀れみである。幼馴染をなぐさめてあげようという気持ちしかなかっただろうと思われるのにもかかわらず、りばちゃんとさりーはその後付き合って同棲をすることになる。
なんで??!!?ごっちが好きだったんじゃないの?!なんで哀れみから身体を許しただけのダメ男りばちゃんと本当に付き合うわけ?!となりませんか。いくら優しいさりーでもそれはおかしくないか。
りばちゃんのこと、どこをどう好きになったのかさりーに小一時間問い質さなければお姉さん気が済まないよ。
以下62分後について。
・よくわからない役者シリーズ①さりー
純情なさりーを演じていた女優がメイクけばけば、純情のじの字もない下品はビッチ女であった、っていうのはどんな意味があるのか。芸能界は汚いぜ、っていうことを表したいのか。また、新人俳優のりばちゃん(中島裕翔)に白木連吾の真の姿について訊かれ「白木の本当の姿なんてわからない。そもそも人間の本当の姿なんて誰もわからん、自分さえわからんのだ」というしみったれたお説教をするのはマジでダサい。今更安っぽいアイデンティティ論をかかげないでくれ。
(アイデンティティ論といえば、同じ行定監督の『GO』は素晴らしかった。原作にも忠実だったし脚本も役者も演出もよかった。ヒロインはショートにしてほしかったけど。あれはどこに行ってしまったんだよ監督!!白木連吾のドラマ『ハピネス』は『GO』を彷彿させる場面があったのはちょっとテンション上がったけど。映画としてのクオリティーは『GO』のほうがダントツ上だと思う)
・よくわからない役者シリーズ②りばちゃん
いけすかない狂気に満ちた野郎だったりばちゃん役の成瀬(菅田)。中島に「本当の息抜き」として芸能人御用達おっぱぶのようなところに連れていく。画面が白黒だったものの本当に見せちゃうんだ、しかもがっつり顔をうずめて鼻血まで出すなんて。どこの古典少年漫画なんだよ!!(おそらく)芸能界の闇に飲まれた白木連吾、というシリアスな話題を提供しようとしてるのにそこで鼻血出ちゃうんすか!!? いかにもな演出に笑っちゃう。
それからぼこぼこ殴られてるのに笑い続けるところが恐ろしく狂気に満ちている。ただそこまでの狂気を演出する意味ってあったのかな。菅田くんのさえない青年からイカれた俳優への変貌ぶりは見事でしたけど。
・最後のシーンの薄っっぺらさ
りばちゃんがごっちの亡霊と話すあのシーン。あまりにも薄っぺらすぎやしませんか。
「人と人はわかりあえない」「(お姉ちゃん大好きだから)姉貴と同じ日に死のうとした」「おまえがその遺書を選んだからだよ」とか意味不明。もっともらしいことをどや顔で言ってくるけど「は???」しかないし、二人がおいおい泣きながら抱き合ってアホ~というのもなんでそうなる?としか思えない。ふつうここで納得できますかね、自殺。生きる人間もいればそうじゃない人間もいる。おまえと俺は違う人間だっただけだ、とかそんなん言ったらおしまいでしょ。そこを描くのが映画でしょ。そんなん言うんなら2時間と1000円返してくれよマジで、ってなっちゃいますよこっちは。
さてそろそろけなしすぎた気がするのでいいところを書きたいと思います。
・中島裕翔がかっこいい。色気が出てきましたね。タートルネックにジャケットは最高。イケメンがより輝く素敵コーデだと思います。
あと途中のHey GirlというイケイケノリノリなPVが面白い。英語歌詞弾き語りよりぜんぜんいい。英語の発音まともにできないんならやめたほうが良かったですね。ただわりとがっつりラブシーンやってるのでファンは複雑かも。
・菅田将暉の豹変ぶりが楽しめる。演技力半端ないな。髪型と服変わるとこんな印象違うんだ、と驚かされる。
…ぐらいですかね。ストーリーじゃなくて役者さんに関してしか出てこなかったな。
衝撃の62分は確かに衝撃だったけどそこからとくに何も生み出せなかった感がある。派手な事故起こして片付けないのかよ! 大風呂敷敷いといて放置ですか? っていうね。役者さんのファンならまだしもストーリー目当てで観る価値はないです。また原作を読んで感想書きたいと思います。